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2024.02.27
コラム

シリーズコラム 「働くことのストレス」 【第7回】 働いている時間のわずかな工夫

引き続き「抵抗感」と「習性」について

前回は休養期間の過ごし方を軸に、しっかりと休む段階と変化を加える段階について触れました。変化を求めるとこころの中に「抵抗感」が生じる場合や、ついつい「習性」になってしまいがちな動画を次々と観てしまうことにどう向き合うかなどのお話しをしました。今回も引き続き、「抵抗感」や「習性」をキーワードにして、会社や組織で働くことについてもう少し深掘りしてみたいと思います。会社や組織で働いていて意外と無自覚になっているのが、それらが持っている習性に働き手が大きく影響を受けていることです。この習性は企業文化、組織文化などの言葉に含めるのも良いでしょうし、会社や組織の仕事のすすめ方といった表現でも妥当なのかもしれません。

会社や組織の習性から働き手が受ける影響

会社や組織でデジタル機器が急速に取り入れられ、仕事のすすめ方も大きく変わり、そして、生産性や効率性の改善が際限なく求められているかと思います。一昔前に半日費やしていた業務がたったの5分で終了してしまうというような事例もたくさんあることでしょう。そして、大幅に圧縮されて空くことになった時間に、今度は別の仕事や業務が割り振られていくことになり、これが会社や組織の「習性」となっていきます。働き手もまた勤勉な人ほどにこの習性を受け入れて、デジタル機器を巧みに使いこなして努力をされていきます。こうしたスタイルが人々のこころにどのような影響を与え、ストレスや疲れを与えていくかについてはまだまだ知見がはっきりとしてない部分もありますが、一つ言えるのは真面目な人ほどこの「習性」に馴染んでいくことに努めて、いつしか自分の「習性」に置き換えてしまっていることがあるように思います。

働く中で「習性」をわずかに外すことの効果

精神科医として診察をしている中で向き合うものに、患者さんは会社や組織が機能として求めている「習性」を、自分の習性にしてしまい、それを少し手放すことに「抵抗感」を覚えているといったケースがあります。お話しを聴いていくと、それは患者さん本来の個性ではなく、無自覚のうちに自らの習性にしてしまっているようです。もちろん、現代社会において働くということが、こうした習性と同調してしまうべく圧力があるのは理解しております。ただ、どれほどデジタル機器に囲まれても、人間のこころがデジタルで成っているわけではなく、働いている時間の中でも、この習性をたまに外すような試みが必要だと思います。たとえば、仕事中にコーヒーを飲む人は多いかと思いますが、自販機や自動のコーヒーメーカーでばかり買い求めるのではなく、携帯タイプのハンドコーヒーミルなどを持ち込んで、休憩中に豆を挽いて静かにコーヒーを淹れるような5分があってもよいのかもしれません。ボタン一つで事を成すことに比べれば、手で回し続けるのは生産性や効率性は落ちますが、人間のこころはこれに感応してリラックスできる部分も持っております。会社や組織が求める「習性」に対して、こうした手で豆を挽くようなささやかな行為が働き手のこころを長く健全に保たせる効果も期待できるでしょう。このくらいなら会社や組織も規則に反すると目くじらを立てることもないとも思います。

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