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2023.07.14
コラム

時々の基本の学び直し

クリニックを開院してひと月

九段下・神保町に心療内科を開院してからひと月が経過しました。大きな病院で勤務していたときとは働き方もペースも異なりますが、少しずつ馴染んでも来ています。自分の裁量で診察を行えるので、時間に余裕のあるときは研修医時代に用いた参考書、折々で買い求めた専門書などを読み返すことがあります。思い返してみますと、私の精神科医としてのキャリアの始まりにはいくつかの幸運がありました。

研修医時代のトレーニング

その一つは精神療法・精神分析のトレーニングをしっかりと受けることができたことです。私が学ばせてもらった信州大学医学部は、『「甘え」の構造』で有名な精神科医土井健郎先生の流れを組んでおり、そこでは基本的文献の読み込みからスタートして、徐々に精神療法・精神分析のアプローチを修得させていく手法がとられていました。こうした環境は当時としては珍しかったと思います。

精神療法・精神分析のアプローチ

精神療法・精神分析のアプローチは、ある程度定まった枠組みの中で患者さんと面談して記録をとり、それをベースに患者さんにも自己洞察を促していきます。そして、患者さんが普段は意識していなかった症状の原因に関わるものを探求していくものとなります。研修医時代は、このアプローチの良さを理論ではわかっても、経験が足りていなかったこともあり、戸惑ったことも多々ありました。ある程度の年月が経った今となれば、理論と経験のバランスを巧く保ちながら診療に向き合うことができるようになったとは思います。ただ、基本はおろそかにしたくないので、時折、こうして昔の参考書に向き合う習慣を大切にしています。

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