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2024.01.13
コラム

シリーズコラム 「働くことのストレス」 【第5回】 治療の期間を考える

通院期間は柔軟に

前回、当院の特徴として患者さんの症状を見極めて、適切な治療法を示すことができるようありたいというお話をしました。その際、治療は柔軟さと変化に富んだものになるといったことを述べました。この柔軟さと変化という意味合いには、治療に要する期間ということも関わってきます。一概にいえませんが、メンタルクリニックに通院される患者さんの中には、定期的で継続的な通院をされる方もおります。風邪などで内科に通院するのに比べると長いとはいえるでしょう。ただ、メンタルクリニックの場合、患者さんのこころの症状は変わりゆくこともあり、精神療法などを通して、それらの原因と丁寧に向き合っていくうちに、月日が経過していくことはあります。

机上の選択とこころの選択

精神療法を通して、こころの調和を整えていく、回復していく過程に一気呵成ということはあまりなく、あせらずゆっくりのペースが本来だと思います。たとえば、ストレスや過労が原因で仕事を続けるのに支障があり、一時的に休職をしたとします。当面はゆっくりと休むことが大切になりますが、休んでいるうちに色々なことを考えるものです。仕事の仕方やアプローチに問題があると思っていたのが、そもそもその仕事が向いているのかどうかといった問いになってくることもあります。忙しさの中で抑え込んでいた疑問が、お休みの中で表に出てくるわけですが、こうした疑問に対して選択肢や方向性を紙の上で整理することは早くできるかもしれません。ただ、その中からどういうものを実際に選んでいくかは、患者さんにとってはとても大切な作業で時間を要するものでしょう。

自分に合うアプローチを探す時間

精神科医が選択肢の中から何かを選ぶことをすすめたりはしませんが、ただ、診療を通して、これまでにどういう類のストレスが、どのような影響をこころに与えていたかといったことの洗い出しや、ストレスや影響への対処法などを提示していくことは出来るかと思います。そして、これらのアプローチの中で自分にとって上手くいくものが見つかれば、その上で、仕事への向き合い方、進め方を変えていくか、仕事そのものを変えていくかなどの選択肢が見えてくるように思えます。もちろん、これらは一つの事例を示しているにすぎませんが、人生を左右する問題ですから時間や回数を一定程度かけてもよいと思います。ですから、メンタルクリニックに通院する期間が長い場合でも、その中で何が営まれているかを考えるのも大切かと思います。

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