「働くことのストレス」 【第4回】 治療法のすすめ方について
治療の過程で検証と見直し
前回、当院が治療の際、初診と再診の間に、患者さんへの治療方針をじっくりと検討するステップを設けるようにしていることに触れました。他のクリニックの事情はわかりませんが、当院としてはこのステップに価値があると考えています。忙しい時代ですし、会社や組織でも仕事がつい流れ作業となってしまい、新たな案件が次々と来る中で、既存の案件の検証と見直しに手が回らなくなるのはよくあるかと思います。当院はこのあたりに気を遣うようにしています。その上で、前回触れたように傾聴を大切にして診療を行い、治療方針の検討と見直しや修正を加えて、可能な限り患者さんの個性や症状に最も合った治療を受けてもらえるべく努めています。
仕事が論理的か直感的かどちらを好むか
たとえば薬物療法ではなく精神療法の一環での話になりますが、対話を重ねていく中で、患者さんの個性によって、仕事での向き合い方で論理的な進め方を好む人と、直観的な進め方を好む人などに分かれるのを知ることになります。もちろん、これはあくまでも程度の問題であり一つの見立て方です。こうした傾向を知ることができるのは、精神療法を行っていく上では有効です。ただし、ある患者さんが論理的な進め方を好むからといって、そちらに軸を置いた治療法が正解とも限りません。仕事で論理的にシステマチックに考えることの度が過ぎていて、こころが疲れてしまっている場合もあります。こういうケースでは直感的な感性の回復へと働きかけた方が良い場合もあります。
具体的なポイントを示すことができるように
その具体的な方法については、今回は分量的に書ききれませんが、一つの特徴として、当院では診察の回数を重ねるごとに、患者さんの回復に向けた具体的なポイントをお話しさせてもらっています。このあたりが、やはり医師の技量が問われるところとなります。なお、具体的なポイントとは、わずかな生活習慣の改善、思考の仕方の変容、行動パターンの変更、それらをどうやって無理なく段階的に進められるかなどの多岐にわたるともいえます。メンタルクリニックは、肉体的な病状だけではなく、精神的な症状を扱いますので、多様なアプローチがありますし、それはクリニックよって異なると思います。そのことを前提で申し上げれば、当院では治療法方針については柔軟さと変化に富み、患者さんにとって適切なオーダーメイドのような治療法を示し続けられるように努めたいと思っています。