AIとこころのリテラシー 第二章 ・ AIの世界から「戻る」時間をつくる

生成AIは、とても便利な存在です。
考えを整理したり、文章をまとめたり、頭の中を言葉にしたりするとき、AIとの対話が助けになる場面はこれからますます増えていくでしょう。
実際、AIとの対話に深く集中する時間そのものは、決して悪いことではないと思います。
ただ、その一方で、少し大切なのではないかと感じることがあります。
それは、「戻る時間」を意識することです。
AIとの対話は、とても滑らかです。話を整理してくれますし、長時間でも会話を続けることができます。そのため、気づかないうちに、頭の中だけの世界へ深く入り込んでいくことがあります。
もちろん、集中して考える時間は必要です。
しかし、人は“考える存在”であると同時に、“身体を持つ存在”でもあります。
たとえば、
・コーヒーを飲む
・散歩をする
・家事をする
・窓を開けて外の空気を吸う
・食事をとる
こうした何気ない時間が、意外とこころのバランスを整えてくれることがあります。
AIとの対話が続いているとき、ときどき家事を挟むだけでも、頭の中の空気が少し変わることがあります。洗い物をしたり、部屋を片付けたりするような時間は、単なる作業というより、「現実の生活へ戻る時間」として働いているのかもしれません。
昔の舞台には「中入り」という言葉があります。
集中した時間の途中で、少し間を置き、空気を切り替える時間です。
AIとの付き合い方にも、こうした“中入り”の感覚は大切なのかもしれません。
深く使うことを否定する必要はありません。
ただ、深く入ることと、「そこに閉じこもり続けること」は少し違います。
登山でも、山に入ること自体が悪いのではなく、「戻ること」が大切です。
AIと共に生きる時代だからこそ、
・身体感覚
・日常生活
・現実の時間
・人とのつながり
へ、定期的に戻ること。
それもまた、これからの時代の“こころのリテラシー”の一つなのかもしれません。
Photo:Alessandro Bianchi