震災とストレス
精神科医として震災とストレスについて少しばかりのお話しをしたいと思います。その前に、能登半島地震で亡くなれた方には心よりのお悔やみと被害に遭われた方々に深くお見舞いを申し上げたいと思います。
ニュース映像との向き合い方
震災とストレスのお話しですが、今回は直接被害に遭っておらず、報道などで被災地のニュースをみる側のストレスについてです。結論からいえば、テレビやネットなどで現地の被災映像をみる際に、程度や時間を制限されるのが良いと思います。お正月の元旦、同じ日本で起きたことで、憐みや同情を持つのはごく自然な感情の発生ですし、何かできることはないだろうかと思われるのもまた当然のことかと思います。
つよい緊張とストレス
難しいのはそうした感情移入がなされている状態で、現地の被災されている動画などをみ続けておりますと、いつしか震災が自分のすぐ近くで起きていることのように感じてきます。それはこころに休まる暇を与えずに、緊張状態を生じさせ続けることになります。この緊張が強まりこころの許容量を超えてしまうと「過覚醒」という状態になり、それは食欲や睡眠のあり方にも大きな影響を与えることになります。ときには、眠りの中にまで追いかけてきて悪夢を繰り返し見るなどの状態にもなることもあります。
支援する側は「こころの調和を」
今回のような震災が起きた時、報道機関といえどもすぐには全体の情報が手に入るわけではなく、発災の初期は同じ映像が繰り返し流れることになります。視聴する側も、特にお正月という休みの間であったことで、ついTVのスイッチをオンにしたままみてしまいがちです。ただ、やはりこれは精神的にはかなりのストレスになるのも事実です。今回の震災を見守る側の人たちは、ニュースをみる頻度や時間などを自分なりに決めて良いと思います。
そして、その震災報道に感じているストレスを一度遮断して、日常の生活に戻ることも大切です。これからも震災の救援活動、その後の復興支援は長期間・継続的に行われることかと思います。寄付行為やボランティア、こころからのエールなど何かしらの形で応援・支援をしていく側ならば、こころの調和は整えられていた方がよりよい形でコミットできるのだろうと思っております。当院もまた支援する側としてそのようにこころの調和を整えておくべく努めたいと思います。