「働くことのストレス」 【第3回】 治療法を探していくこと
当院として出来ることの追求
前回、メンタルクリニックの数が増えたことや、薬物療法の効果と問題について触れました。加えて、保険診療という決まり事がクリニックにとっても診察時間を限らざるを得ないことについても言及しました。当院がこれらメンタルクリニック界隈の抱えている問題や環境を大きく変えることはできませんが、それでも当院だけでも出来る試みはしっかり取り組んでいきたいと思っています。
最善の治療法をみつけていくために
まず、当院では初診の際に可能な限り、しっかりと患者さんのお話しを聴くということを大切にしています。このことを傾聴といいますが、耳をかたむけながら、お話しされていることをしっかりと記録をしていきます。医師としての知見と経験値に基づいて初診で何かしらの診断は慎重に行いますが、再診がある場合は、それまでの間にカルテを見返し、要点を改めて整理して記録し、症状と治療方針(治療の見込み)について見直しをするようにしております。
医師の腕が問われるところ
実のところ、これは結構な手間のかかる作業で、診察時間が終了した後でじっくりと取り組みます。見落としていることはないか、別の可能性やアプローチはないか。聴き忘れたことはないかなど、必要があれば初診で得た洞察に修正を加えていきます。精神科医は一度下した診察の結論を絶対視しないという部分では謙虚であるべきだと思っています。
こうして次回に備えて、再診においてはポイントを絞って診療を開始していきます。こちらからも伺ってみたいことを尋ねることもあれば、患者さんの経過をじっくりと聴く場合もあります。その上で患者さんに合った最善の治療法を決めていくことになりますが、そこには薬物療法、精神療法、カウンセラーを併用した治療法などが含まれてきます。このとき当院が気をつけているのは、患者さんの希望や、どこまで回復させたいかなどをしっかりと聴くこと、そして、当院の能力の程度もしっかりと弁えることです。自らの手に余る場合、もしくは、症状によっては適切な専門医を紹介した方が良い場合もあります。