AIの時代 と こころの調和 第三章 ・ AIは「正解」を求めるよりも「対話」に使ってみる

“正解”より、“整理”へ
AIを使うとき、つい「正解を示してください」と頼みたくなります。けれど、こころを整えるという観点では、AIはむしろ“答えを出す道具”ではなく、“考えを整える道具”として役立ってくれることがあります。
たとえば、「得意分野の考え方を3つ挙げて、苦手分野に対応づけてみてください」「苦手分野を、全体像→要素→関係→例外の順で理解しやすく説明してほしいです」「自分の得意分野から負荷の小さい入口を一緒に見つけていきたいです」といった問いかけは、現実的な一歩になり得ます。
大事なのは、AIから返ってきた文章をそのまま信じることではなく、それを材料にして「自分の頭の中に地図を拡げていく」ことです(ときにメモやノートに書きつけながらでもいいでしょう)。地図ができると、不思議と焦りが減り、理解が入りやすくなっていきます。ここでも、少しずつの回復が起こるともいえます。
苦手の裏に「感情」が混ざるとき
そしてもう一つ、見落とされがちな点があります。
それは、苦手の背景には、ときに感情が混ざるということです。
「なんとなく嫌い」「触れるだけで疲れる」——こういった嫌悪感が強いほど、理解はさらに遠のいていきます。この場合、無理に好きになる必要はありません。ただ、もし嫌悪感が学びの邪魔をしていそうならば、周辺から迂回していくというアプローチもあるかと思います。
文化、料理、物語、スポーツ——どこか一つでも「少し好感が持てる入口」を探してみる。現代の物事に苦しさを感じるならば、昔へと時間をずらして問いを入れてみる。そうした迂回路が、結果として心身の負荷を下げてくれることがあります。
使い方は「厳しいルール」より、柔らかな距離感で
AIに関しては、「危ないから使うな」と言い切ることも、「便利だから全部任せよう」と振り切ることも、どちらも極端な考え方だとは思います。当院としては、そのあいだのところ——使いどころを整えるという立ち位置こそが、こころの調和にとって大切だと考えています。
控えめに、けれど実用的に意識していただきたいのは次のような距離感です。
・一度に詰め込みすぎない(情報が多いほど、こころは急かされやすくなります)
・考えを整えるのに使う(答えをもらうのではなく、整理するために使う)
・生活のリズムを大切にする(睡眠や休息が乱れているときは、無理をせずにまずは心身を休めて整える)
AIは、便利な道具にはなり得るでしょう。ただ、人の回復が「少しずつ積み重なるもの」である点は、デジタルの時代であっても変わらないと考えます。焦るほど言葉は増え、情報は増え、こころは疲れてしまう。デジタル的にボタン一つで回復はできない、そんなときこそ「今は整えている途中」と、ほんの少しスピードを落としてみることが大切になるのだと思います。
Photo:Amy Torbenson