「心理的安全性」と新たなストレスのこと
最近耳にする「柔らかなことば」
最近わりとよく耳にするようになった「心理的安全性」という言葉。まだしっかりとした定義は決まっていないようですが、それでも色々な企業や団体が、そこで働く人たちのために取り組み始めているようです。私なりに本や特集記事などを読んで学んでいますが、この言葉の意味は、企業や団体などの組織で、自分の考え方や感じることを心理的プレッシャーやストレス、緊張を覚えることなく発言できる状態だと解釈しています。
心理的安全性の目的
九段下・神保町で心療内科を開業している身としては、こうした「心理的安全性」について前向きに取り組んでいくところが増えるのは良い事だと感じています。ただ、少し思うところがあるとすれば、こうした必要が唱えられた目的を踏まえておくのも大切だということです。「心理的安全性」の目的は、ビジネス上での独創的なアイデアやイノベーションを生み出し、情報の交換や共有の効率化を目指すところにあって、「心理的安全性」自体の導入や維持が目的そのものではないということです。
意識しておくことの予防
このことを企業や団体で働く個人の段階で考えたときに、「心理的安全性」が維持されたことで、組織などが持つ権威や権力が原因になりやすいパワハラ、それらへの忖度といったストレスからはある程度解放されることになります。ただ、他方で「心理的安全性」のもとで、自分の考え方や感じるところを自由に発言することもまた、新たなストレスが生じてくるともいえるでしょう。
そして、自分にとって未知であり新たなストレスが無意識のもとに徐々に蓄積していくこともあるかと思います。ですから、たとえ「心理的安全性」が取り入れられても、新しいストレスを自分は受けているはずだと少し意識しておくのが良いとも思っています。もちろん、過敏になる必要はないですが、そうした新たなストレスに対して、自分のこころに静かな注意を与えておくのは、ある種「ワクチン」のような予防にもなると思っています。