2025.12.29
認知行動療法 と こころの調和

認知行動療法 と こころの調和―― 第二章 小さな行動を変えていく・2

・小さな行動の準備を重ねる

仕事や会議の場での緊張に対しても、「行動」の見直しは有効です。会議そのものが怖いのか、質問されることが怖いのか、議題が理解できないまま座っていることがつらいのか。どこで負荷が高まるのかを一緒に確認したうえで、

・いつもより一歩だけ丁寧に資料を読み込む
・「わからないときに、こう切り返す」という自分なりの一文をあらかじめ用意しておく

といった、小さな行動の準備を重ねていきます。完璧な発表を目指すのではなく、「わからないなりに、ここまでは備えた」という実感を増やしていくことが、緊張の中でも自分を支える軸になるでしょう。

・生活の基本は、大事な土台となる

そして、不安が強い時期ほど忘れられがちなのが、「生活の基本」を守るという行動です。
睡眠、食事、軽い運動。どれも当たり前のことのようですが、不安が強まると真っ先に削られてしまう部分でもあります。将来への不安や家族の問題、仕事の先行きなど、「今すぐには解決できないこと」に頭を占領されると、どうしても生活のリズムが乱れていってしまいます。
そのようなときには、「大きな問題を一気に解決しようとしない」代わりに、

・まずは、決まった時間に起きること
・一日一回だけでも外の空気を吸うこと
・食事を抜かないこと

といった、ごく基本的な行動を優先してみるようお伝えすることもあります。
これは「気合を入れよう」という話ではありません。土台が崩れたままでは、不安に対して考えたり工夫したりする力そのものが育たないからなのです。

認知行動療法における「行動の工夫」とは、何か特別なチャレンジではありません。
むしろ、「いまの自分が無理なく続けられる範囲の中で、小さな手順を整えること」です。確認を一回に決める、生活リズムの“柱”を一本だけしっかり守る、自分なりの「ここまでならできる」を何本か持っておく。そうした地味な工夫の積み重ねが、「自分は何もできていない」という認知を、「少なくとも、これだけは守れている」に少しずつ書き換えていきます。

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