認知行動療法 と こころの調和―― 第二章 小さな行動を変えていく・1

認知行動療法という名前の通り、「認知(ものの見方)」と並んで大切になるのが「行動」です。
頭の中でどれだけ「大丈夫」と言い聞かせようとしても、日々の行動パターンがまったく変わっていないと、不安はなかなか弱まりません。逆に、ほんの小さな行動を変えるだけでも、「前より少し楽かもしれない」と感じられる瞬間が生まれることがあります。
・外出に強い不安を覚えるとき
服装は変ではないか、忘れ物はないか、人の目を引いてしまわないか――。その不安を打ち消そうと、何度も鏡を確認したり、持ち物チェックを繰り返して、出かけるまでにぐったりしてしまうこともあります。
このようなケースでは、確認を減らすのではなく、「確認の仕方」を整理してみることから始めることがあります。
・出かける前に鏡で全身を一度だけしっかり確認する
・忘れ物リストを一枚作り、その順番でチェックする
この「一度だけ」「一枚だ」を、自分との約束として決めておくのです。すると、確認という行動は残しつつも、「延々と不安を追いかけるための確認」から、「自分を支えるための確認」に質が変わっていきます。回数を減らすことが目的ではなく、「自分で決めたやり方で、自分を守る」という感覚を取り戻すことが大切ともいえるでしょう。
・ふるまいを変えて、自分の尊厳を回復させる
トラウマに関わる不安の場合も、行動の工夫が助けになります。過去に理不尽な扱いを受けた経験が忘れられない事があります。その出来事自体を無理に思い出して語り直すことが、必ずしも必要とは限りません。むしろ、「自分はその逆のことをして生きていく」という方向を、静かに選び続けることがこころの支えになることがあります。
たとえば、人にきつく当たらないように意識して関わっていくこと。これ自体は派手な行動ではありませんが、「自分はあのとき傷ついた側であるけども、自分はされたことを人に繰り返さない」という静かな誓いになります。過去の傷を帳消しにすることはできなくても、「これからの自分のふるまい」を通して、自分の尊厳と自信を少しずつ回復させていくことはできるでしょう。