2025.12.29
認知行動療法 と こころの調和

認知行動療法 と こころの調和――  序章 不安・恐怖・緊張・焦り ― 「未知」とどう付き合うか 

・認知行動療法は常識的なアプローチ

「認知行動療法」という言葉を耳にされることがあっても、どんなものかは少しイメージしにくいかもしれません。ただそれは、何か特別なことをするというよりも、常識的なアプローチを焦らずに納得しながらとっていくという表現のほうが適切かもしれません。
人は誰しも、ものごとに対する「感じ方」「考え方」に、その人なりの個性や癖を持っています。認知行動療法では、その感じ方(認知)がどこか極端になっていないか、悲観に傾きすぎていないかを一緒に見つめ直し、その調和を現実と向き合いながら少しずつ整えていくことを目指します。そのとき、考え方だけを一気に変えようということではなく、できる範囲の小さな行動を積み重ねていくところから始めて、自分自身で納得しながら考え方を変えていくといったものがあります。

・さまざまな感情は未知からのサイン

診察の中でお話を伺っていると、「恐れ」「ストレス」「緊張」「不安」といった感情は、思っている以上にさまざまな場面で顔を出していると感じます。電車や飛行機などに乗るのが怖くなる、学校や職場の友人・同僚の関係、マンションや地域の人間関係にストレスを感じる、会議やプレゼンの場で急に緊張を感じて体が固まってしまう、将来やお金のことを考えると不安で胸が締めつけられる。
程度の差はあっても日常の中で起きてしまうことでもあります。ただ、これらの感情は実のところ、自分が弱いから生まれるわけではありません。人間はもともと「よくわからないもの=未知」に強い感情の揺れを覚えるようにできています。

・認知と行動のアプローチ

認知行動療法の視点で見ると、「恐れ」「ストレス」「緊張」「不安」などに対してできることは、大きく二つあります。
一つは「認知」、つまりものの見方や意味づけを少しずつ整えていくものです。たとえば一例として、行政機関や公的な窓口へアクセスするとき感じるストレスには、それらの機関が独特な理屈で動いていることを納得する。いつの間にか出来ている地域・マンションコミュニティの力関係に向き合うとき感じる不安には、それらの関係に明確な根拠があるわけではないことを知っておく。「みんなに見られている」と感じる発表の場に立つ緊張には、他者から評価と自分の評価を一緒くたにしないように意識する。このように感情の揺れの根拠の正体の一部を探りながら、それに対する認知の仕方に少し工夫を凝らします。

もう一つはこうした認知の仕方の工夫を無理なく自分自身へと取り込んでいくための「行動」、日常生活の中での小さな一歩ともいえるものを、継続的に繰り返していくといったことになります。これら認知と行動の二つが互いにかみ合えば、ゆっくりではありますが、こころに生まれる摩擦がやわらいでいきます。このシリーズコラムでは、「未知を既知にしていく」「小さな行動を変えていく」「不安を悪者にしない」といった視点から、具体的なヒントをお伝えしていきたいと思います。ここでご紹介しているのは、当院で行っている認知行動療法の考え方を、日常生活に近い形でご紹介したものです。

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