スマホ時代 と こころの調和 第五章 ・ スマホと共に育った世代と、デジタル時代を見守る親の世代

スマホと共に育った世代へ
中学の頃からスマホを使ってきたという方も多く、「スマホに育てられた世代」といっても過言ではありません。その分、感情の揺れやストレス耐性が弱まりやすい傾向も見られます。本人には自覚がないことが多く、「頑張って減らしたけれど、また戻ってしまう」といった相談も珍しくありません。
こうした場合は、焦らずゆっくりと話し合うこともあります。人間の脳はまだ、長時間スマホを使うように設計されていません。アンデシュ・ハンセンの『スマホ脳』にもあるように、脳はデジタル環境に適応しきれておらず、常に刺激と報酬を追い求めてしまう構造を持っています。だからこそ、まずはその仕組みを理解することから始めていく。
“これは自分の意志の弱さではなく、脳の特性なのだ”と知るだけでも、対処の方向が変わっていきます。
デジタル世代を見守る親へ
デジタル時代は何もかもが効率的で、思いどおりに進むように見える世界です。しかし周知のように、現実の成長や努力は地味で、ゆっくりとしか積み上がりません。このギャップに、デジタルネイティブの子どもたちは少なからず苛立ちや不安を抱えています。親世代は、そうした「焦り」や「苛立ち」を、性格ではなく“時代の影響”として理解する視点を持つことも大切かと思います。
子どもは生まれたときからデジタルに囲まれています。デジタルの面白さは、もはや感性の一部であり、身体の一部のような存在になっています。だからこそ、それを「悪い」と切り捨てるのではなく、「どう使うか」「どう付き合うか」という形で話し合っていくことが求められます。人間は生身で生きている以上、アナログな部分を無視することはできません。AIやChatGPTのように無限のリソースを持つ存在とは異なり、私たちのエネルギーには限りがあります。そのことを親自身が理解し、子どもにも伝えていくことが大切です。
現代の子どもたちは、情報の波に囲まれながらも、こころの中では焦りやフラストレーションを抱えています。それを「意志の弱さ」と見なすのではなく、世代特有の課題として受けとめる。そして、効率や成果ではなく「安心して立ち止まれる環境」を整えることこそ、いま最も大切な支えになるのではないでしょうか。